青山まりの『心も身体もハッピーでGO!』第13回|乳がん用のブラジャー選び
こんにちは!ブラジャー研究家の青山まりです。今回は、「乳がん用のブラジャー」です。乳がんは、世界比で、日本女性がかかる割合がトップであり、その羅漢率は毎年増加しています。生涯のうちに乳がんになる女性の割合は、50年前は50人に1人でしたが、現在は14人に1人と言われており(2018年現在)年間6万人以上が乳がんと診断されています。年々増加している理由は、食生活の欧米化や女性の社会進出などが考えられています。乳がんの羅漢率を年代別にみると、30歳台後半から増加し始め、40歳台後半から50歳台前半でピークとなります。つまり、女性の働き盛りを襲う病気であるともいえるのです。また、まれですが、20歳台で乳がんになることもあります。
乳がんの治療の分類
乳がんの治療方法は、局所療法と全身療法があります。
局所療法とは、乳がんにできたがん細胞を取り除く、または死滅させる方法で、放射線で治療する方法と、手術をする方法があります。
全身療法は、リンパや血液の流れに乗って乳房の外に運ばれたがん細胞の増殖を抑える方法で、薬物で治療します。
乳がんの治療の流れ
乳がん治療では、基本的に、先ず初期治療として手術を行い、術後に補助療法として再発防止のための放射線療法や薬物療法を組み合わせて行います。
具体的には、お医者さんが患者さんの年齢や職業などのライフスタイル、考え方や希望などを聞いて治療法は決めておこなっていきますので、ケースバイケースになります。
乳がんの手術
乳癌の手術には大きくわけて、「乳房温存手術」と「乳房切除手術」の2つがあります。
「乳房温存手術」は、乳房を部分的に切除する方法です。この手術の後に行われる放射線療法と合わせて「乳房温存療法」といわれています。
「乳房切除手術」は、乳房全体を切除する方法です。この手術の後で、乳房を取り戻す「乳房再建術」が行われることがあります。
手術後に着けるブラジャーの選び方
乳がんの手術前に使っていたブラジャーは使えなくなりますので、手術後に着けるブラジャーを、手術の前に、あらかじめ用意しておきましょう。
手術後につけるブラジャーの目的
・身体の重心のバランスを整えるため
・外見を整えるため
・外的衝撃から創部を守るため
・冷えないよう保温をするため
乳がん用パッドとは
ブラジャーの中に入れて膨らみとして使う、なくなった胸の代わりとなるパッドです。
<術後まもないとき>
軽量でやわらかい成型ウレタンと不織布を生地でくるんだパッドや、衝撃吸収度が高い低反発ウレタンでできたパッドなどがあります。症状に合わせて使います。
(特徴)
・軽く、やわらかい
・形が崩れないようになっている
・いろいろな形、大きさのものがある
<術部が落ち着いてきたとき>
術部が落ち着いてきたら、乳房に近い感触と重みでずり上がりにくいシリコンパッドが相性がよくなってきます。いろいろな重さ、形状のものがあります。
(特徴)
・からだに自然にフィットし、なだらかなバストラインにしてくれる
・乳房に近い重さでバランスを保ちやすい
・パッドがずれ上がりにくい仕様になっている
手術直後のブラジャー
手術直後は、腕を上げ下げするだけでも痛いという体験者の方の声がありますので、腕を上げ下げしなくても脱ぎ着しやすく傷を保護できる下着を選びましょう。
前開きタイプ、胸帯タイプなどが便利です。
<前開きタイプの特徴>
・傷口が痛くないよう締めつけない仕様になっている
・着脱がラクなように前開きで、スナップで留めるようになっている
・バストサイズの変化に対応できるよう、伸縮性のある素材でできている
<胸帯タイプの特徴>
・手術部をガーゼパッド・エアクッションで固定し、止血するようになっている
・マジックテープで、圧迫力を調節できるようになっている
手術後の経過が落ち着いた頃のブラジャー
<デコルテ部分の開き具合の狭いブラ>
洋服の上部からバスト部分がみえないよう、バストのデコルテ部分の開き具合を、普通のブラジャーよりも狭くしているブラジャーでバスト部分を保護します。外出するときなど、着用する洋服に合わせて、デコルテの開き具合を合わせられるようになっています。
<ウォーキング用ブラ>
ウォーキングなどの軽い運動をするときに着けるとふさわしいノンワイヤーブラジャーです。
(特徴)
・ホックがないので、着脱は、下から穿くタイプの仕様。
・肌触りがよく、吸汗速乾性のメッシュ素材でできている。
<水着専用ブラ>
水着専用ブラもあります。
(特徴)
・カップ部分の裏側に、パッドを入れるポケットがついている。
・カップ部分の裏側のポケットが、パッドが飛び出しにくい仕様になっている。
・バックスタイルが、動いてもずれにくいY字型になっている。
温存手術をした後のブラジャー
温存手術をした後用のブラジャーは、バストの左右差を整えることを目的としています。
バストの左右差のある人は、温存手術をした人用のパッドを使いますが、比較的左右差の少ない方は、やや厚みのあるカップ裏打ちのブラジャーであればパッドなしでも自然に左右差をととのえることができます。
(特徴)
・やや厚みのある裏打ちでバストの左右差を整えやすい
・肌に当たる側は綿混素材でできている
・ポケット布には吸汗・速乾性があり、むれにくくなっている
温存手術をした人用パッド
前摘出用のパッドと比べ、パッド全体が薄めにできています。
温存手術をした側のふくらみに、そっとかぶせるようにフィットさせます。
再建手術をした後のブラジャー
再建手術後、再建した乳房が安定するまでには1年ほどかかるといわれています。術後のステップに合わせ、医師に聴いて医師の指導の元に下着を選びましょう。
<再建後、1ヶ月程度>
腫れと痛みがあり、普通のブラジャーがつけられないときは、手術後用の胸をささえるブラがあります。
(特徴)
・締めつけず、ほど良いサポート力がある
・バストサイズの変化に対応できる伸縮性がある
・前開きのスナップ留めなので、着脱がラク
<乳房再建後、1ヶ月~術部が安定するまで>
ソフトな着け心地のノンワイヤーブラで術部をカバーし、安定させましょう。
(特徴)
・アンダーバストの前中心部分が圧迫されないような仕様になっている。
・肌ざわりのよいソフトな素材が使われている優しい着け心地
<乳房再建後、1年ほど経過>
乳房再建後、1年ほど経ち、再建した胸が安定し、検診後にどんなブラをつけてもよいと医師から指示があったら、再建した大切な胸を守るために、実用性を重視しながらおしゃれをたのしみましょう。
まとめ
今回は、「乳がん用のブラジャー」について学びました。当方が下着研究家になった19年前に乳がん用のブラジャーをご紹介する際には、こんなにたくさんの種類がありませんでした。なので、当時は大変不安感があったのを覚えています。それが今は、たくさんのメーカーから、使い勝手がよいもの、可愛いデザインやお洒落なものまで開発され、種類が豊富になっていて、とてもよい時代になってよかったなと思います。なので、手術後1年くらい経ち、お医者さんからどんなブラでもいいですよ、と許可が出たら、ぜひ、洋服に合わせてお洒落を楽しみましょう。
また、プライベートライフについてですが、中には「乳がんの手術の跡をみられたくないから」という理由で、温泉旅行を控える人もいらっしゃるようです。いっぽう、当方の知っている乳がん手術の経験者の方は、ギリギリまでタオルで隠して入浴する方法で温泉に入っていた、とおっしゃっている方もいます。また、温泉施設で認められている「乳がん入浴着」を着て温泉に入ったという方からも旅行に行ってきたというお話をお聴きしています。洗い場にも仕切りがされているお風呂の宿へ行けば、洗い場でも他の人にみられるということがないそうです。なので、手術をして1年ほど経過し、お医者さんの許可が出たら、自分のサイズに合ったおしゃれな下着を身に着けて、ウォーキングや旅行など、ぜひ、プライベートライフも、明るく過ごしましょう。
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[supervisionText]執筆者/ブラジャー研究家・下着研究家[/supervisionText]
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[supervisionAffiliation]「女性の生き方と下着」をテーマに消費者の立場で活動している。バストアップ・エクササイズやバストケア・マッサージなどを開発。新聞、雑誌、ウェブなどの執筆、監修のほか、講演やセミナー、テレビ出演も多数。著書に『ブラの本』(サンマーク出版)、『着るだけダイエット』(東邦出版)など。
■HP:http://mariaoyama.sakura.ne.jp/[/supervisionAffiliation]
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